歴 史
奈良の都は、約1300年前の710年(和銅三年)飛鳥藤原宮から平城京に遷都し、山城国長岡に移るまで74年間国政を司り、華やかな天平文化が育み栄えました。この頃の信仰の場として東大寺、興福寺など南都七大寺と春日大社等の社寺仏閣が創建或いは移築され、門前町として発展し、更に物見遊山、観光へと時代は変遷してきました。
奈良公園
一般的に理解されている奈良公園は660ヘクタールの広大な地域にまたがり、貴重な歴史的文化遺産を包蔵する東大寺、興福寺、 春日大社、保存のための文化施設である国立博物館、正倉院等々と、これらをとりまく雄大で豊かな緑の自然美が調和して、他に類例の ない歴史公園とも称される奈良公園となりました。
木々に映える堂塔伽藍、若草に萌える芝生、鹿の群れ遊ぶ風情、「大仏と緑と鹿」で代表される奈良公園は古都奈良の顔でもあります。
奈良公園の基礎データ
名称奈良県立都市公園 奈良公園
開設年月日明治13年2月14日
総面積511.33ha (内、平坦部 48.77ha ・ 山林部 462.56ha) 平成29年4月改正告示
観光客数年間約1,300万人
主な動物シカ(約1200頭)、タヌキ、イノシシ、ムササビ、リスなど
主な植物マツ、サクラ、モミジ、ナンキンハゼ、アセビ、スギ、サルスベリ、ウメ、クスノキ、ヒノキなど
(平坦部87種、約10,000本 ・ 山林部207種、本数不明)
奈良公園の魅力
奈良公園では、古代より様々な時代において、人々の心を捉えてきた美しい風致景観が形作られてきました。
古 代
春日野や春日山が万葉集に詠われるなど、大宮人らの絶好の遊楽逍遥の地として親しまれました。
万葉集において記述される奈良公園に関する地名は全86首にのぼります。
野(春日野、浅茅原等)に関する歌 29首
山(春日山、御蓋山等)に関する歌 40首
川(率川、能登川等)に関する歌 17首
近 世
中国で伝統的に画題となってきた「瀟々八景(しょうしょうはっけい)」になぞらえて、日本各地で「八景」の名所が選ばれています。
奈良の南都八景は、寛正6年(1465)の文献に見られ、我が国で最初に選定された八景です。
江戸時代に発行された『大和名所図会』や『新撰大和名所往来』といった書物の中に登場します。
1.東大寺の鐘
2.春日野の鹿
3.南円堂の藤
4.猿沢池の月
5.佐保川の蛍
6.雲井坂の雨
7.轟橋の旅人(行人)
8.若草山の雪
近 代
明治より大正・昭和にかけて、数多くの文人等が奈良を訪れ、また住まう中で、奈良公園における景観の特性を評した記述を残しています。
「兎に角、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残つてゐる建築も美しい。
そして二つが互いに溶けあつてゐる点は他に比を見ないと云つて差し支へない。
今の奈良は昔の都の一部に過ぎないが、名画の残欠が美しいやうに美しい。」
■志賀直哉『奈良』,昭和13年(1938)
「奈良公園は日本で一番美しい公園だと思う。(中略)なんとなく自然的な雄大さがあり、よくある箱庭趣味によってゆがめられていない。特にこせこせした築山や引きずってきてすえつけた岩石などのないのが気持よい。
もちろんこんなものはここでは必要がない。何しろ自然そのものが背景に丘陵山岳を配し、前景の地形を優雅に構成しているからだ。」
「木立ちは、美しい公園で見受けられるようにあまり密生せず、ここかしこの丘のすそで、まだ斧を加えられたことのない、荘厳な原始密林に連なっている。樹木類は主としてスギ、マツ、クスノキ、常緑のカシワ、モミジ、ケヤキ等」
「荘厳な公園へ眼を向けると、まったく神秘的なながめで、至るところ、これらのなれた獣と共に、千古の寺や塔が赤、白の装いをこらし、絵のような美しい形を、ほのかに見せている。(中略)およそ地上に、これ以上理想的の平和な風景はあり得ない。」
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