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花的故事(三)栗子花

花的故事(三)栗子花

作者: jimaiwa | 来源:发表于2018-08-12 14:46 被阅读0次

    三.栗子花

    寺田寅彦

      我曾住过三年的吉住家,位于黑发山山脚下稍稍往里的地方。屋子后面是狭窄的后院,上面被几乎长在悬崖上的大树密密麻麻地覆盖着。倾斜的落叶树的果实,与鹎鸟的鸣叫声一起落在房檐上。我借宿的独立房屋前门,一定要通过后院。面临庭院的客厅尽头,有一间只有三张榻榻米大小的房间突出在外,它有一扇漂亮的圆窗。这里一定是房主女儿的起居室,圆窗的拉窗,连夏天也紧闭着。一到夏初,忙于作考试前的准备工作期间,缨带似的黄花从房顶一直到院子落了一大片。落花腐烂之后,小小的庭院中充满了一种甜甜的浓烈的香味。大批大头苍蝇发出声势浩大的嗡嗡声,聚集到这里。我想是势力强盛的大自然,用旺盛之气袭击了它们的脑袋吧。散落着花瓣的窗户内,房主羞怯的女儿低垂着脑袋,正在学习读书或做针线活。我初次来到这人家时,她才刚十四五岁的样子,披散着立桃式顶髻的额发,色泽黝黑,容貌俊俏,目光清澈,从哪方面看都是一个可爱的女孩。由于房主夫妇没有成年的孩子,在亲戚的孩子中领养了一个。他们除了女儿之外,只有一只三色猫,不用说是一个很寂寞的家庭。至于我自己,一向是不爱说话的怪人,很少与房主说亲切话,对女孩更未说过悄悄话。每天吃饭时,那女孩随着她那木屐声出现了,带着本地口音说道:“请别误了吃饭!”说完便匆匆而去。开始时,仅仅是作为孩子的想法,可是随着每年夏天探亲回来,总觉得自己有点长大了,自己的眼睛也看得更清楚了。考试前的某一天,掌灯时节,我复习腻了,便从独立房屋的走廊走出来,栗子树花的香味扑鼻而来。房主屋前的灌木丛中,女孩穿着雪白的衣服,系着红色的带子,一个人坐在暗淡的光线中。这时她从正面凝视着我,露出了奇怪的笑容,接着像是追什么东西似的,向客厅方向飞奔而去。到那年夏天为止,我离开那个地方去了东京,第二年夏初时节,收到了从几乎忘了的吉住家发来的信,似乎是那女孩写的。由于除了贺年片之外,从未听到任何关于他们家的消息,女孩将他们在想些什么,他们那地方的样子,详详细细地写信告诉我。她还问我,离开原来住的地方之后,有没有在谁家借宿。信上还写着,东京那地方,一定是个好地方吧,一生中想去那里看一看。关于其他事情,似乎再没有写什么,我总觉得那艳丽的笔调,毕竟出自年轻人之笔吧。最后结束时写着,栗子树开花等候回信,不久花谢亦等候回信。落款人姓名,是以母亲的名义写的。

    三 栗の花

    三年の間下宿していた吉住(よしずみ)の家は黒髪山(くろかみやま)のふもともやや奥まった所である。家の後ろは狭い裏庭で、その上はもうすぐに崖(がけ)になって大木の茂りがおおい重なっている。傾く年の落ち葉木の実といっしょに鵯(ひよどり)の鳴き声も軒ばに降らせた。自分の借りていた離れから表の門への出入りにはぜひともこの裏庭を通らねばならぬ。庭に臨んだ座敷のはずれに三畳敷きばかりの突き出た小室(こべや)があって、しゃれた丸窓があった。ここは宿の娘の居間ときまっていて、丸窓の障子は夏も閉じられてあった。ちょうどこの部屋(へや)の真上に大きな栗(くり)の木があって、夏初めの試験前の調べが忙しくなるころになると、黄色い房紐(ふさひも)のような花を屋根から庭へ一面に降らせた。落ちた花は朽ち腐れて一種甘いような強い香気が小庭に満ちる。ここらに多い大きな蠅(はえ)が勢いのよい羽音を立ててこれに集まっている。力強い自然の旺盛(おうせい)な気が脳を襲うように思われた。この花の散る窓の内には内気な娘がたれこめて読み物や針仕事のけいこをしているのであった。自分がこの家にはじめて来たころはようよう十四五ぐらいで桃割れに結うた額髪をたらせていた。色の黒い、顔だちも美しいというのではないが目の涼しいどこかかわいげな子であった。主人夫婦の間には年とっても子が無いので、親類の子供をもらって育てていたのである。娘のほかに大きな三毛ねこがいるばかりでむしろさびしい家庭であった。自分はいつも無口な変人と思われていたくらいで、宿の者と親しいむだ話をする事もめったになければ、娘にもやさしい言葉をかけたこともなかった。毎日の食事時にはこの娘が駒下駄(こまげた)の音をさせて迎えに来る。土地のなまった言葉で「御飯おあがんなさいまっせ」と言い捨ててすたすた帰って行く。初めはほんの子供のように思っていたが一夏一夏帰省して来るごとに、どことなくおとなびて来るのが自分の目にもよく見えた。卒業試験の前のある日、灯

    (ひ)ともしごろ、復習にも飽きて離れの縁側へ出たら栗(くり)の花の香は慣れた身にもしむようであった。 主家(おもや)の前の植え込みの中に娘が白っぽい着物に赤い帯をしめてねこを抱いて立っていた。自分のほうを見ていつにない顔を赤くしたらしいのが薄暗い中にも自分にわかった。そしてまともにこっちを見つめて不思議な笑顔(えがお)をもらしたが、物に追われでもしたように座敷のほうに駆け込んで行った。その夏を限りに自分はこの土地を去って東京に出たが、翌年の夏初めごろほとんど忘れていた吉住(よしずみ)の家から手紙が届いた。娘が書いたものらしかった。年賀のほかにはたよりを聞かせた事もなかったが、どう思うたものか、こまごまとかの地の模様を知らせてよこした。自分の元借りていた離れはその後だれも下宿していないそうである。東京という所はさだめてよい所であろう。一生に一度は行ってみたいというような事も書いてあった。別になんという事もないがどことなくなまめかしいのはやはり若い人の筆だからであろう。いちばんおしまいに栗(くり)の花も咲き候(そうろう)。やがて散り申し候とあった。名前は母親の名が書いてあった。

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