第一章 永远记得我
記憶というのはなんだか不思議なものだ。その中に実際に身を置いていたとき、僕はそんな風景に殆んど注意なんて払わなかった。とくに印象的な風景だとも思わなかったし、十八年後もその風景を細部まで覚えているかもしれないとは考えつきもしなかった。正直なところ、そのときの僕には風景なんてどうでもいいようなものだったのだ。僕は僕自身のことを考え、そのときとなりを並んで歩いていた一人の美しい女のことを考え、僕と彼女とのことを考え、そしてまた僕自身のことを考えた。それは何を見ても何を感じても何を考えても、結局すべてはブーメランのように自分自身の手元に戻ってくるという年代だったのだ。おまけに僕は恋をしていて、その恋はひどくややこしい場所に僕を運びこんでいた。まわりの風景に気持を向ける余裕なんてどこにもなかったのだ。
记忆这玩意儿真是不可思议。当我身历其境时,我是一点儿也不去留意那风景。当时我并不觉得它会让人留下深刻的印象,也绝没料到在十八年后,我可能将那一草一木记得这么清楚。老实说,那时候的我根本不在意什么风景。我只关心我自己,关心走在我身旁的这个美人,关心我和她之间的关系,然后再回头来关心自己。不管见到什么、感受到什么、想到什么,结果总会像飞镖一样,又飞到自己这一边来,当时正是这样一个时代。再说,我那时又在谈恋爱,那场恋爱谈得也着实辛苦。我根本就没有气力再去留意周遭的风景。
でも今では僕の脳裏に最初に浮かぶのはその草原の風景だ。草の匂い、かすかな冷やかさを含んだ風、山の稜線、犬の鳴く声、そんなものがまず最初に浮かびあがってくる。とてもくっきりと。それらはあまりにくっきりとしているので、手をのばせばひとつひとつ指でなぞれそうな気がするくらいだ。しかしその風景の中には人の姿は見えない。誰もいない。直子もいないし、僕もいない。我々はいったいどこに消えてしまったんだろうと僕は思う。どうしてこんなことが起りうるんだろう、と。あれほど大事そうに見えたものは、彼女やそのときの僕や僕の世界は、みんなどこに行ってしまったんだろう、と。そう、僕には直子の顔を今すぐ思いだすことさえできないのだ。僕が手にしているのは人影のない背景だけなのだ。
然而,现在率先浮现在我的脑海里的,却是那一片草原风光。草香、挟着些微寒意的风、山的线、狗吠声,率先浮现的正是这些,清清楚楚地。也因为实在太清楚了,让人觉得仿佛只要一伸手,便能用手指将它们一一描绘出来。但草原上不见人影。一个人也没有。没有直子,也没有我。我不知道我们究竟上哪儿去了。为什么会突然发生这种事呢?曾经那么在意的,还看她、我、我的世界,究竟都上哪儿去了?对了,我现在甚至无法立即记忆起直子的脸来,我能想到的,就是一幕不见人影的背景而已。
もちろん時間さえかければ僕は彼女の顔を思いだすことができる。小さな冷たい手や、さらりとした手ざわりのまっすぐなきれいな髪や、やわらかな丸い形の耳たぶやそのすぐ下にある小さなホクロや、冬になるとよく着ていた上品なキャメルのコートや、いつも相手の目をじっと覗き込みながら質問する癖や、ときどき何かの加減で震え気味になる声(まるで強風の吹く丘の上でしゃべっているみたいだった)や、そんなイメージをひとつひとつ積み重ねていくと、ふっと自然に彼女の顔が浮かびあがってくる。まず横顔が浮かびあがってくる。これはたぶん僕と直子がいつも並んで歩いていたせいだろう。だから僕が最初に思いだすのはいつも彼女の横顔なのだ。それから彼女は僕の方を向き、にっこりと笑い、少し首をかしげ、話しかけ、僕の目を覗き込む。まるで澄んだ泉の底をちらりとよぎる小さな魚の影を探し求めるみたいに。
当然,只要肯花时间我还是可以忆起她的脸。小小的冰冷的手、一头触感柔顺光滑的长发、软而圆的耳垂、耳垂下方一颗小小的痣、冬天里常穿的那件骆驼牌外套、老爱凝视对方的双眼发问的怪癖、有事没事便发颤的嗓音(就像是站在刮着强风的山坡上说话一样),把这些印象统统集合起来的话,她的脸便自然而然地显现出来了。最先显现出的是她的侧脸。这大约是因为我和直子总是并肩走在一块的关系罢。所以先让我忆起的常是她的侧脸。然后,她会转向我这边,轻轻地笑着,微微地歪着头开始说话,一边凝视着我的眼睛。仿佛要在清澈的泉底寻找一晃而过的小鱼似的。
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