小王子 第二章 羊(五)
「んー、ダメだよ。この羊はひどい病気だ。違うのを描いて。」
僕は描き直した。
男の子は僕を気遣って(気遣うーきづかう)、優しく微笑んだ(微笑むーほほえむ)。
「よく見て、これは羊じゃないでしょう。雄羊(おひつじ)だよね。角(つの)があるもの。」
そこで僕はまた描き直した。
けれどそれも前の二つと同じように拒絶(きょぜつ)された。
「この羊は年を取りすぎているよ。僕、長生きする(ながいき)羊がほしいの。」
我慢も限界に近づいていた。修理を始めなければと焦っていた。(焦るーあせる)
小王子 第二章 羊(六)
僕は、ざっと書きなぐった(書きなぐるー乱暴に書く)絵を男の子に投げ渡した(投げ渡すーなげわたす)。
「これは羊の箱だ。君が欲しがっている羊はこの中にいるよ。」
すると驚いたことに、この小さな審査員(しんさいん)の顔が、ぱっと輝いたのだ。
「ぴったりだよ。僕が欲しかったのは、この羊さ。ねえ、この羊、草をいっぱい食べるかな?」
「どうして?」
「僕の所はとっても小さいから。」
「大丈夫だよ。君にあげたのはとっても小さな羊だからね。」
「そんなに小さくないよ。あれ、羊は寝ちゃったみたい。」
こうして僕は、この小さな王子様と知り合いになった。
小王子 第二章 羊(七)
王子様がどこから来たのか分かるまで、かなり時間がかかった。王子様は、僕にはたくさん質問をしてくるのに、こちらからの質問にはほとんど耳を貸さなかったので。少しずつ全てが明らか(あきらか)になっていったのは、王子様が偶々(たまたま)口にした言葉からだった。それは、初めて僕の飛行機を見た時のことだ。
「何、これ?」
「飛行機。空を飛ぶんだ。僕の飛行機さ。」
空を飛べると自慢げ(じまんげ)に話していたら、王子さまは大声(おおごえ)で言った。
「え?じゃあ、君は空から落っこちてきたんだ。(落っこちるーおっこちる)」
「まあ、そうだなあ。」
「あ、それはおかしいね。」
小王子 第二章 羊(八)
王子さまは可愛い声で笑い出したが、僕はかなりいらいらした。自分を襲った(襲うーおそう)災難を真面目に受け取ってほしかったのだ。しかし王子さまは続けてこう言った。
「それじゃ、君も空から来たんだね。どの星から来たの?」
その瞬間(しゅんかん)、王子様がなぜここにいるのかという疑問に、さっと光が差し込んだように感じて、僕はすぐに尋ねた。
「君は、よそ(他所)の星から来たのかい?」
しかし王子さまは答えず、飛行機を見て、そっと首を振っただけだった。
「これに乗ってきたのなら、そんなに遠くからじゃないよね。」
そう言うと、物思い(ものおもい)に沈んでいった。(沈むーしずむ)
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