小王子 第二章 羊(ひつじ)(一)
こうして僕は、六年前、サハラ砂漠で飛行機が故障(こしょう)するまで、心を許して話せる相手に出会うこともなく、一人で生きてきた。
飛行機は、エンジンのどこかが壊れていた。整備士(せいびし)も乗客(じょうきゃく)も乗せていなかったので、僕は難しい修理の仕事を一人でやり遂げるしかなかった。死活(しかつ)問題だった。飲み水は一週間分あるかないかだった。
最初の夜、僕は人の住む場所から千マイルも離れた砂(すな)の上で眠った。大海原(おおうなばら)を筏(いかだ)で漂流(ひょうりゅう)する遭難者(そうなんしゃ)より、ずっと孤独(こどく)だった。
小王子 第二章 羊(ひつじ)(二)
だから、夜明け(よあけ)に小さな可愛らしい声で起こされた時、僕がどんなに驚いたか想像してみてほしい。その声は、こう言った。
「お願い、羊(ひつじ)の絵を描いて。」
「え?」
「羊を描いて。」
雷(かみなり)に打たれた(打つ被動)みたいに飛び起きると、目を擦って(擦るーこする)辺りを見回した。そこには、とても不思議な子供が一人いて、僕を真剣に見つめていた。
僕は突然現れたその子供を目を丸くして見つめた。何度も言うけれど、人の住む所から千マイルも離れていたのだ。しかしその子は、道に迷っているように見えなかった。疲れや飢え(うえ)や渇き(かわき)で死にそうになっているようにも、怖がっているようにも見えなかった。人の住む所から千マイルも離れた砂漠を真ん中にいながら、途方に暮れる(とほうにくれるー道に迷う)迷子(まいご)と言った様子は少しもなかったのだ。
小王子 第二章 羊(ひつじ)(三)
ようやく口が聞けるようになると、僕はその子に尋ねた。
「君は、こんな所で何をしているの?」
しかしその子はとても大切なことのように、静かに繰り返すだけ。
「お願い、羊の絵を描いて。」
馬鹿げた話だが、人の住む所から千マイルも離れて、死の危険に曝されている(曝すーさらす)というのに、僕はその子に言われるままに、ポケットから一枚の紙切れ(かみきれ)と万年筆(まんねんひつ)を取り出していた。だけどそこで、僕が一生懸命勉強してきたのは地理と歴史と算数と文法(ぶんぽう)だけだったことを思い出して、少し不機嫌になりながら、絵は描けないんだと、その子に言った。
小王子 第二章 羊(ひつじ)(四)
「そんなの構わないよ。羊を描いて。」
僕は羊の絵なんか描いたことがなかったので、自分に描けるたった二つの絵のうちの一つを描いてあげた。ボアの外側(そとがわ)の絵だ。
その時男の子がこういうのを聞いて、僕はびっくりした。
「違う違う。ボアに飲み込まれた象なんて要らないよ。ボアはとっても危険だし、象は結構場所塞ぎ(塞ぐーふさぐ)だから。僕の所はとっても小さいんだ。ほしいのは羊。羊を描いて。」
そこで僕は、羊を描いた。
手
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