CPS が「お客様の立場を貫く」 立場にあるということは,先ほど見てきたが, そのためには,顧客について詳細に知ることが求められる。マーケティング活動として以下のようなことを行っていた。
例を挙げ、「X-TRAIL を作ったときには,日本,欧州,オーストラリア,チリ,パナマ,台湾,タイなど歩いて,実際のお客さまの声をずっと聞いて歩いたわけです。
3. CPS とマーケティングそれで。この車の企画をやってきて,やはり強みは『実際にお客さんのニーズをとらえてきた』というだけなんです。あそこで『あれが積みにくい』と言っていたとか,市街地で『こういう車が欲しい』というふうに言っていたよねというのが強みです。」 「X-TRAIL」に関しては,当初のターゲット通り,若年層(シングル&カップルのレジャー・ア日産自動車の新たな製品開発体制に関する実証研究クティビティ) への販売が出来ているとのことであったが,それ以外にも,中高年層への販売も好調であるとのことであった。「XTRAIL, SUV(Sports Utility Vehicle)という種類の車で,多人数でスキーやスノーボードなどに出かけて遊ぶためのものである。そのため図 3 のように,撥水性の高いシートで濡れたスキーウェアでの乗車が可能であったり,内装の一部分が取り外して洗えることに加えて,比較的安価にもかかわらず高機能な四輪駆動システムが搭載されているといった特徴がある 。それらは顧客の要望を反映して製品開発が行われているわけだが,それに加えて,同車種の場合は以下のようなことが行われている。マウンテンバイク,スノーボード,サーフィン,クライミング,ボディーボードなど,各界のチャンピオンを組織して「チーム X-TRAIL」 とし,その公式スポンサーにもなっている。そして,彼らに同車種を1台ずつ使ってもらい,その人達と一緒に作ってきたという経緯がある。「X-TRAIL」は,彼らの持つ道具が全部入るような設計になっており,長いサーフボードなどが全部入るようにされている。また, 2 ヶ月に 1 回ぐらいずつ定期的に話をして,同車種の評判やアウトドアスポーツの状況,日産自動車への要望などを聞くといったことが行われている。
3. CPS とマーケティングちなみに,同社がスポンサーになっている,「X-TRAIL ジャム・イン・東京ドーム」 という催しが毎年行われている。これは東京ドームの雪のジャンプ台を作って,スノーボードの競技会をやっているが,約5万人ぐらいの入場者があり,テレビ放映も行われている。冬場はこのような催しがいくつか行われ,夏はサーフィンの公式スポンサーにもなるといったことが行われている。「私はこの車を通じて,彼らに楽しんでもらいたい,道具として使ってもらいたいということで,そういう意味も込めてこういうスポンサーをずっとやっています。最近,サーファーだとかスノーボーダーなんかで,日産自動車が X-TRAIL を出してから,こういう競技が盛んになったという嬉しい話しをいくつか聞いています。単に車を作っていくということから,そういう貢献のために,道具としてこの『X-TRAIL』を使ってもらいたいということです。」 技術系の出身者が多い CPS は,市場をよく知ることで顧客のニーズをつかみ,技術的要素に「翻訳」して,自動車という製品に仕上げていく。そのために,技術上の知識に加えて,マーケティング能力と「顧客志向」の考え方を求められるということであろう。 CPS も以下のように述べている。「お客様が知らないニーズかもしれないが,こういうニーズがある,それを我が社の技術だとこんな形で実現できる,間をうまくつなぐ『翻訳』というのか,それが欠けると何百億もかけた仕事が全部意味が無くなってしまいます。つまり,車というハードウエアと,お客様という非常にエモーショナルなものとのニーズを結んで考える,そういうことによって商品力の差を見極めたり,将来の動向を見たりということです。技術と心理学の両方をつなげて考えるということだと思います。エンジニア出身者は,お客様のご要望よりも,それが出来るかどうかが先に来てしまうので,それを出さない訓練というのをやらないといけません。そして,お客様について相当勉強しないといけないと思います。文科系の出身者は,逆にお客様のご要望を,技術者に伝えるための言葉や,使われ方を勉強しないといけません。」 ちなみに CPS も技術者の出身であり,マーケティングとは全く無関係の職務に長く従事していたということである。こうした CPS が,上記のような「顧客志向」の考えに至るには,以下のようなエピソードがあったことが聞かれた。
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